平屋といえば、一階建ての日本家屋といったイメージがあるかもしれません。最近では、おしゃれなデザインや吹き抜けのある平屋も増え、ファミリー層から若い世代まで人気となっています。また、一部の天井を取り払い、ひとつの空間となって人が集まりやすい空間にもなります。とはいえ、開放感あふれる吹き抜けの平屋には、それぞれメリットとデメリットがあるため、新築の平屋を建てる際は、失敗したくないものです。
そこで今回は、平屋の吹き抜けの仕組みや吹き抜けを作るメリット・デメリット、吹き抜けのある平屋の実例についてご紹介します。これから吹き抜けのある平屋を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
□平屋の吹き抜けについて
平屋の吹き抜けとは、1階の天井と2階の床を設けず、屋根の勾配をそのまま天井に仕上げる空間です。つまり、勾配天井を活用したものが吹き抜けの平屋です。勾配天井とは、斜めに勾配になっている天井を指します。屋根の形状を活かして傾斜をつけた天井です。片流れ屋根の場合は、天井の一辺が高く、もう一辺が低くなっています。切妻屋根では、中心の棟木から左右に下がる形です。
□平屋に吹き抜けを作るメリット
平屋に吹き抜けを作る際はさまざまなメリットがあります。
*勾配天井で部屋を明るくできる
夏と冬では日射角度が異なるため、通常の窓だと日の入り方にばらつきが生じてしまいます。
また、平屋では、周囲に建物が建っていると日射が遮られることが多いです。このため、勾配天井の付近にハイサイドライトやトップライトを設置すると、一年を通じてより多くの採光を取り入れやすくなります。晴れた日であれば、照明がいらないほど明るくなるでしょう。
*開放感のある広々と明るい部屋になる
勾配天井を活かした平屋のリビングは、吹き抜けを作ることにより、縦横ともに広がりのある空間が実現します。一般的に部屋の床から天井までの高さは2,400mm〜2,500mmですが、勾配天井になると3,000mmを超える場合もあります。このため、部屋の面積が実際よりも広く感じます。
*風通しがよくなる
ハイサイドライトには、開閉ができないFIXタイプ、手動で開閉できるタイプ、電動で開閉できるタイプがあります。開閉できるタイプのハイサイドライトやトップライトを使用すれば、吹き抜けでも風通しがよくなります。高窓と腰高窓をバランスよく設置すれば、暖かい空気は上へ抜けていき、腰高窓から新鮮な空気が入るようになり、空気の循環が良くなるでしょう。建築前に専門家である設計士に現地調査を依頼し、風の流れを把握しておくのも一つの方法です。
*外からの視線が気にならなくなる
勾配天井にして高窓を設置すると、外からの視線が遮られ、プライバシーの確保につながります。
したがって、通行人や近所の人と目が合ったりすることもありません。
*居住スペースを増やせる
吹き抜けのある平屋は、横だけでなく、縦のスペースを有効活用できます。例えば、ロフトやスキップフロアなどを設置できます。スキップフロアとは、1つの階層に複数の高さのフロアがある間取りを指します。通常の家は、1階、2階、3階となりますが、スキップフロアでは、1.5階の空間を作ることが可能です。
そのため、部屋ごとに床の高さや天井の高さが異なります。スキップフロアの下部を半地下、床から少し高い位置の小上がりなどを設けることで、2階建てのような間取りを実現できます。
□平屋に吹き抜けを作るデメリット
平屋に吹き抜けを作る際は、デメリットにも注意しなければなりません。
*光熱費がかかる
暖かい空気は上へいく傾向にあり、空気が天井付近にたまりやすくなります。そのため、冬場は部屋の中が暖まりにくく、エアコンの光熱費がかかってしまうのです。また、吹き抜けのある平屋ではトップライトの冷気が下がり、足元にたまるので寒くなってしまう場合もあります。
エアコンは、8畳の家では8畳用、10畳であれば10畳を設置するのが一般的です。吹き抜け部屋で使用するエアコンは、畳数が2、3ランク上のものを使用すると良いでしょう。状況に応じて床下エアコンを使用すると、部屋全体を暖めることが可能です。
*天井付近のメンテナンスが大変
吹き抜けの天井にある照明聞器具は、いずれ交換が必要となります。LEDの照明が一般的になりましたが、それでも交換が必要なため、脚立やはしごを利用しなければなりません。また、天井付近の窓やシーリングファンなどの掃除も大変です。長いモップでも届かないケースも多く、照明器具の交換と同様に脚立やはしごの利用が必要となる場合があります。いずれにしても、メンテナンスの際は危険を伴うことが多く、状況に応じて専門の業者に依頼するのも一つの方法です。
*耐震性が下がる可能性
平屋は耐震性が高いですが、吹き抜けを取り入れている場合は柱が少ないケースや窓が大きいなどの理由から、耐震性が下がる可能性があります。耐震性を高めるためには、構造計算にもとづき吹き抜けを家の端に設置しないことや耐震性に影響しない窓の位置や大きさに配慮しなければなりません。耐震性能については、専門家である設計士に確認しておきましょう。
□吹き抜けのある平屋の実例
*吹き抜けとロフトがある平屋
吹き抜け部分にロフトを設置する平屋です。天井付近に窓を設置すると自然光が差し込み、風通しも良く、部屋が明るくなります。ロフト部分は畳を敷き、 造作デスクと照明を取り入れると書斎としても利用可能です。また、主寝室の引き戸を全開にすることで仕切りがなくなり、開放感あふれる空間となります。リビングの床を一段下げるロースタイルリビングにすると、さらに部屋全体が広く感じるでしょう。
*ソーラーパネルと吹き抜けがある平屋
片流れの屋根にソーラーパネルと吹き抜けのある平屋です。吹き抜けの設置は高額になる場合が多いですが、ソーラーパネルがあれば、発電した電力を家庭で消費することも可能で、光熱費の節約ができます。余った電気は自動的に電力会社へ売電されることになります。
*バリアフリー仕様の吹き抜けがある平屋
玄関に手すりを付け、スロープを設置したバリアフリー仕様の吹き抜けがある平屋
です。腰板と天井にひのきを使い、床柱を階段の手すりの一部に使用するといったアクセントを取り入れることも方法の一つです。和室をリビングと続き間として利用できるよう設計しています。天井付近に窓を設置すると自然光が差し込み、風通しも良く、部屋が明るくなります。
□まとめ
平屋に吹き抜けを作るメリットとして、勾配天井の付近にハイサイドライトやトップライトを設置すると部屋が明るくなる、開放感のある広々とした空間の実現、高窓の設置によるプライバシーの確保、ロフトやスキップフロアなどを用いて居住スペースを増やすことなどがあります。
平屋に吹き抜けを作るデメリットとしては、空気が天井付近にたまりやすくなり、エアコンの光熱費がかかる、天井付近のメンテナンスに手間がかかる、柱が少ないケースや窓が大きいなどの理由から耐震性が下がる可能性があるなどです。
いずれにしても、吹き抜けのある平屋に住みたい方は、具体的なイメージを設計士に提案し、ライフスタイルに適した住まいであるかどうかを検討しましょう。吹き抜けのある平屋に興味がある方は、ぜひ当社へお気軽にご相談ください。