平屋は、1つのフロアに生活空間が集まるので、生活の利便性を向上させる上では間取りをいかに工夫するかがカギになってきます。快適に暮らすためには、間取りについてどのような工夫をすると良いのでしょうか。今回は、平屋で暮らしやすい間取りを実現するためのポイントを紹介します。
□平屋の種類と特徴について
家族構成やライフスタイルによってベストな間取りは異なります。
ここからは、平屋の種類とそれぞれの特徴を紹介します。
自分に最も合う形を見つけるための参考にしてみてください。
*I型
I型は長方形で、いくつかある形の中で最もシンプルだと言えます。大きな空間を作りやすく、風通しの計算もしやすいでしょう。また、生活動線をコンパクトにでき、家族の気配も感じやすい作りとなっています。
一方で、音が響きやすく、日当たりが悪くなりやすいという懸念点もあります。プライベートな空間を確保するのが難しいというデメリットも考慮する必要があります。
*L型
L型は縦と横の空間の組み合わせにより、寝室のようなプライベート空間とリビングのような生活空間を分割できる形です。家族全員が使うスペースと個人スペースをほどよく確保できるでしょう。また、中庭を囲う形になるので、外からの視線を遮断できます。
しかし、L字の角部分は強度が弱く、補強コストがプラスでかかります。また、外気の影響を受けやすいので冷暖房機能への配慮も必須です。
*コ型
コ型は、日当たり、風通し、プライバシーの確保に優れている形です。中央で中庭を囲う形なので、プライバシーを確保しやすく、どの部屋からも中庭を眺められるメリットがあります。部屋の見通しに優れていることから子供を自由に遊ばせてあげられるのも魅力的です。
ただし、建物が若干複雑な形になるので、他の形と比べて建築コストが高くなりがちであるという懸念点があります。また、中庭の水はけが悪いと建物下の湿気でカビやシロアリの原因となるので注意しなければなりません。
*ロ型
ロ型は、家族だけのプライベート空間を作るのに適している形です。ロ型は真四角なので、中庭を完全に囲む形になります。外部からの視線を気にしなくて良い完全なプライベート空間の実現が可能です。また、中庭から光や風を取り入れられるので、どの部屋にも光を供給させられるでしょう。
一方で、中庭にものを設置したい場合は事前に搬入しておかなければなりません。もし建築後に何か置きたい場合はクレーンを使うしかありません。さらに、コ型と同様に水はけにも注意する必要があります。
□平屋を建てる上で重要なポイント
平屋を建てる上ではいくつか押さえておくべき重要ポイントがあります。
より暮らしやすい住宅の実現のためにも以下の点は必ずチェックしておきましょう。
1つ目は、家事動線を整えることです。
平屋は1つのフロアで完結するシンプルな構造です。そのため、生活動線や家事動線を整えるのが容易であるというメリットがあります。動線を整える上で重要なのは水回りをまとめることです。キッチンとパントリー、洗面所、バスルームを一塊にすることで、スムーズな移動が可能になります。
さらに、洗濯に関わる動線をより効率化したい場合は、サンルームやウッドデッキを間取りプランに追加するのがおすすめです。そうすることで、衣服を集めて洗濯し、干すという一連の作業がスムーズに進められるでしょう。
2つ目は、隙間スペースを有効活用することです。
平屋建ては面積を広く取れないことも多いので、部屋数も少なくなりがちです。リビングや子供部屋などの主要な部屋については広い空間にしたいところですが、完成後によくあるのが、思っていたよりも収納が少なくて苦労したという事例です。人の生活スペースを広くすると当然生活部分以外のスペースは狭くなります。このバランスをしっかりと考慮していなければ快適な暮らしが難しい平屋になってしまいます。
各部屋ごとに小さくても良いので収納スペースを設けるようにしましょう。また、ウォークインクローゼットやロフトを導入すれば、ある程度のまとまった荷物を置けるスペースとして活用できるでしょう。
3つ目は、高低差を考えた間取り作りをすることです。
スペースが限られている平屋では、横だけでなく縦のスペースも活用するべきです。屋根の形を工夫したり、ロフトを設けたりすることで縦方向にも空間を生み出せます。特に、ロフトに関しては設置のハードルが低いので必ず取り入れたい間取りアイデアと言えます。
4つ目は、空間を最大限に活かすことです。
子育て中の方の中には、子供が独立した後を見越して平屋にしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。実際、子供が独り立ちした後の2階建て住宅では、子供がいた2階部分のメンテナンスの手間がかかり苦労しているという事例も少なくありません。平屋であれば、コンパクトに暮らせ、階段を上り下りする必要がなく、老後の夫婦の生活に適していると言えるでしょう。
老後の夫婦生活における平屋の活用法としては、子供が使っていた部屋を夫婦それぞれの生活スペースとすることです。夫婦の部屋は同じであるケースは多いと言えますが、平屋では子供の独立後に子供部屋を使うことで生活スペースを最大限に活用できます。この方法をとることで、2階建て住宅にありがちな、子供部屋が使われることなく、ただメンテナンスの手間だけがかかる空間になるという事態を避けられるでしょう。
□失敗しないためのポイント
平屋の家づくりでの失敗を避けるために、注意すべきポイントが3つあります。
1つ目は、周囲の建物についてです。
平屋は1階部分しかないため、基本的には背の低い建物となります。そのため、周辺に背の高い建物があると日当たりや風通しが悪くなることが考えられます。もし住宅が密集している地域で平屋を検討している場合は、周辺にマンションのような高い建物が建つ予定がないかどうかを調べておく必要があるでしょう。
2つ目は、プライベート空間への配慮についてです。
前述の通り、平屋は背の低い建物なので、周囲からの視線が入りやすい建物と言えます。開放感を求めるあまり、大きめの窓を設置すると視線がより入りやすくなり、快適に暮らすのが困難になる可能性があります。住宅は本来プライベートな空間を守るという役割を持っています。周辺状況については事前にしっかりと調べて、人通りの有無や多寡、視線がどのように入る可能性があるのかを把握しておきましょう。
3つ目は、防犯についてです。
平屋は出入りがしやすく、避難しやすい家です。しかしこれは裏を返すと防犯対策が必要な家とも言えます。旅行などで長期間家を開ける際には、空き巣のターゲットとなることを考慮しなければなりません。防犯については、間取りの工夫はもちろんのこと、踏むと足音がするように砂利を敷いたり、センサーライトを導入したりといった工夫が必要になるでしょう。
□家事動線を良くする間取りについて
1つ目は、洗濯動線が短い間取りです。
洗面所を独立させて、脱衣所とランドリールームを一体化させた間取りは、無駄がなく効率的な家事動線を実現させるのに有効です。
2つ目は、料理や買い出し、ゴミ出しがスムーズにできる間取りです。
キッチンはダイニングと横並びにして、カップボードの横にウォークインタイプのパントリーを配置した間取りでは、料理の配膳が楽になるだけでなく、食材の移動も手間がかかりません。
□家事動線の良い間取りにするためのポイントとは
まずは、楽にしたい家事が何なのかを考えましょう。
洗濯を楽にしたい場合は、脱衣所とランドリールーム、クローゼットをまとめると便利です。また、買い出しを楽にしたい場合は、玄関とキッチン、パントリーをまとめると良いでしょう。楽にしたい家事によって適切なアプローチが異なるので、求める家事動線に応じた工夫を施すと良いでしょう。
また、行き来が多い空間を間取りの中心に置くことも大切です。
建物によっては回遊動線を作れないケースもあるはずです。そのような建物では、行き来が多い空間を間取りの中心に据えることで、利便性の向上に繋がるでしょう。基本的には、リビングやキッチンを家の中心に配置することで、廊下を省略でき、動線を短くできるでしょう。
□まとめ
今回は、平屋で暮らしやすい間取りを実現したい場合に押さえておくべきポイントを紹介しました。平屋は構造的に動線がシンプルになりやすいと言えますが、より利便性を向上させたい場合は、家事動線を良くするのが効果的です。家事動線を良くするには、楽にしたい家事を考え、行き来が多い空間を間取りの中心にするということを意識しましょう。