和室やリビングと家の外周部分にあるスペースのことを「縁側」や「濡縁」と呼びますが、実際には縁側と濡縁は場所も用途も違います。また、それぞれメリットとデメリットがあるため、正しく理解して設置することで後悔のない家づくりにすることができます。そこで、この記事では縁側と濡縁とそれぞれのメリット・デメリット、おしゃれに仕上げるコツについて解説します。現在和風な家づくりを計画している人は、是非参考にしてください。
□濡縁と縁側の違いとは?
濡縁と縁側はよく似ていますが、全く違うスペースです。また、濡縁とウッドデッキもよく間違われるため、この章で詳しく違いについて解説します。
*濡縁は「外」、縁側は「内」
濡縁とは家の外に設置された、腰掛けて作業ができるスペースのことです。庭先に向いていることが多く、屋根はあっても濡縁と同じ大きさとなります。そのため雨が降ると濡れてしまう縁となるため、「濡縁(ぬれえん)」と呼ばれています。
一方、縁側は家の中にあるスペースで濡れることはありません。つまり、掃き出し窓の外にあるのが濡縁で内側にあるのが縁側ということになります。
このように、実際に設置してみると濡縁と縁側の設置位置は大きく異なることになるでしょう。
*濡縁とウッドデッキの違い
外に設置し、腰かけたり作業をするという意味ではウッドデッキともよく似ていますが、ウッドデッキと濡縁は「利用用途」が大きく異なります。濡縁は腰かけて休んだり談話することが目的で、作業をするといっても手作業程度です。
一方、ウッドデッキはバーベキューや大掛かりな家具の組み立て、洗濯物干しなど、複数人が同時に作業することを目的としています。そのため、濡縁のように「くつろぐ」ということがメインの目的ではないことを知っておきましょう。
このように、庭先の活用方法によって濡縁とウッドデッキの選択は変わります。
とはいえ最近ではウッドデッキをくつろぐ目的で利用されるご家庭もいらっしゃいます。
□縁側はどういった役割を持つ?
日本の住宅には昔から縁側を設置することが多いですが、日本ならではの大きな役割を担っています。
この章では縁側が持つ役割について詳しく解説します。
古民家風の家を検討している人は、是非参考にしてください。
*温度調整ができる
縁側は「外」と「部屋」の間にあるため、縁側に隣接する部屋は夏は涼しく冬はあたたかくなります。このように、四季がある日本では縁側をうまく利用することで温度調整できる家を建ててきました。
*廊下とは別に動線を確保することができる
日本は土地が狭く、家屋内を効率良く利用する技術が磨かれてきました。そして、大人数が生活しても生活動線がぶつからないようと考えられたのが、縁側を廊下のように使い部屋同士を繋ぐ間取りです。これにより廊下部分で生活動線がぶつかりにくくなり、大人数でも快適に生活できるようになりました。
こういった間取りは現代の和風住宅でも取り入れられており、効率的な間取りだといえるでしょう。
□縁側が持つメリットにはどんなものがある?
縁側には他の間取りにはない独特のメリットがあります。
この章で詳しく解説しますので、縁側を検討している人は参考にしてください。
*寒暖差が緩やかになる
前述したように縁側は外気と部屋の温度差を穏やかにするメリットがあり、急激な寒暖差をなくすことでヒートショック対策になります。
*部屋が広く感じられる
リビングや和室に縁側を隣接させることで、間取り以上に広く見える視覚効果を演出することができます。また、部屋とは違うテイストの空間が横にあることでおしゃれなイメージを作り上げることができるでしょう。
□縁側が持つデメリットにはどんなものがある?
縁側にはデメリットもあり、前述したメリットと合わせて検討することをおすすめします。
*スペースが必要
縁側を設置するスペースが必要となるため縁側を設置することで各居室やリビングが小さくなる可能性があります。また、縁側の利用用途を明確にしておかなければ普段使用しない空間が広がってしまうことになるため、注意しましょう。
*防犯上の問題が起きやすい
縁側と部屋の間には通常襖や雪見障子があるため、閉めてしまうと泥棒が侵入しても気づかないこともあります。その場合は襖一枚挟んだ向こう側に侵入者がいることになり、非常に危険な状態になるでしょう。このようなリスクを抱えないためにも、縁側を設置する際には防犯対策も合わせて検討することが重要です。
*庭を手入れする工数と費用がかかる
これは後述する濡縁にも共通するデメリットといえますが、庭が荒れていると縁側から見える景色が台無しになってしまうため、庭は常にキレイにしておく必要があります。その結果、手入れの工数と費用は縁側がない家よりもかかってしまうでしょう。
□濡縁が持つメリットにはどんなものがある?
縁側と同じく、濡縁にもメリットがありますので、この章で詳しく解説します。
*庭を楽しむことができる
庭先でくつろげる空間は四季を感じ取ることができ、ガーデニングや庭を見て楽しみたい人にはおすすめのスペースだといえるでしょう。そのため、注文住宅を建てる際に「庭」に関する希望条件が多い人には、濡縁を取り入れてみても良いかもしれません。
*コミュニケーションが取りやすい空間を作ることができる
濡縁に腰をかけて談話をする光景は昔の日本ではよく見かけましたが、現代の住宅でもコミュニケーション空間として採用されています。このように、濡縁は気軽に家族が話すことができるスペースとして使われています。
*オリジナル性の高い間取りになる
濡縁は庭先と家屋の間にあるため、工夫次第ではオリジナル性の高い住宅になります。
そのため、おしゃれな空間にする前提で設計することをおすすめします。
□濡縁が持つデメリットにはどんなものがある?
濡縁にはデメリットもあり、手入れの工数や費用面で負担があります。
この章で詳しく解説しますので、濡縁を導入する前には必ず参考にしましょう。
*汚れやすい
濡縁は外に設置されるため非常に汚れやすく、こまめに掃除しなければ腰掛けることができないスペースになるでしょう。そのため、濡縁の設置は掃除を頻繁にできることが前提だといえます。
*天候が悪い日は利用できない
雨天時や風が強い日は濡縁を使用することができません。
また、途中から晴れたとしても濡縁が濡れている場合は座ることに抵抗がでてしまいます。
*維持コストもかかる
濡縁はデザインの観点から木製であることが多く、防蟻処理や軋みの修理などが定期的に必要です。これらのメンテナンスをしない場合、腐食によって破損してしまい危険なスペースとなってしまうため、注意が必要です。
□まとめ
濡縁と縁側はよく似ていますが用途が大きく違い、使い分けることでそれぞれのスペースを有効活用することができます。また、濡縁にも縁側にもメリットとデメリットがあるため、「おしゃれだから」という理由で導入すると思わぬ失敗に繋がることもあります。
そのため、まずは濡縁と縁側の違いを正しく把握し、その上でどのように活用したいのかを家族で協議し適切な間取りを選択しましょう。そうすることでオリジナル性が高く、ゆっくりくつろぐことができる間取りを設計することができます。